糖尿病

このようなお悩みはありませんか?

糖尿病は、早期に発見し治療を開始することで、合併症のリスクを大幅に減少させることが可能です。しかし、多くの方が特に初期症状を自覚しないため、医療機関を受診しないまま疾患が進行することがあります。上記の症状に心当たりがある場合、または家族歴がある方は、糖尿病を発症している可能性があります。放置すると心臓病、腎臓病(透析)、失明、下肢の切断など重大な合併症を引き起こすことがあります。ご心配な方は、一度医療機関で検査を受けることを推奨しております。

糖尿病とは

糖尿病とは糖尿病は体内のブドウ糖利用障害による持続的な高血糖状態を特徴とし、未治療時には「失明」「腎臓病」「神経障害」「足の壊死」「心筋梗塞」「脳梗塞」など深刻な合併症を引き起こす可能性があります。世界保健機関(WHO)によると、糖尿病患者は世界中で増加傾向にあり、2015年時点で成人の約9%が糖尿病またはその予備軍であると報告されています。糖尿病とその合併症は早期発見と適切な管理により予防可能ですが、生活習慣の見直し、特に食生活の改善や定期的な運動が病状管理の鍵となります。治療は、病型や進行状況に応じて食事療法、運動療法、薬物療法、インスリン療法等が含まれ、これにより糖尿病でも質の高い生活を維持することが可能です。合併症の発生を未然に防ぐためにも、定期的な検査での早期発見と治療開始が非常に重要です。
(※出典:糖尿病アトラスー第7版ー, 国際糖尿病連合,(2015))

糖尿病の原因

糖尿病には、「1型糖尿病」と「2型糖尿病」という2つの主な分類分けがされ、これに加えて「妊娠中の糖尿病」などの種類も見られます。

1型糖尿病

1型糖尿病「1型糖尿病」は、主に自己免疫反応が膵臓のインスリン生産細胞(β細胞)を破壊することで起こる疾患です。インスリンの生産が停止し、血糖が適切に管理されないことで慢性的な高血糖状態になります。この自己免疫反応は、遺伝的要因や環境的要因(特定のウイルス感染など)により誘発されることがあるものの、
発症の詳細な原因は未だ明らかではありません。1型糖尿病は2型糖尿病と異なり、生活習慣の影響を受けにくく、インスリン補充療法が必須となります。発症は全年齢層で見られるものの、特に若年層での発症が多く、適切なインスリン療法と血糖管理により、健康的な生活を送ることが可能です。専門医の診断と治療計画が重要であり、合併症を避けるためにも早期の介入が必要です。

2型糖尿病

2型糖尿病「2型糖尿病」は、日本で最も一般的な糖尿病タイプで、患者の95%以上を占めます。
この病気は、インスリンの効果が不十分になるインスリン抵抗性と、すい臓からのインスリン分泌低下によって特徴付けられます。
主な原因には「遺伝的素因」と「環境要因」があり、特に肥満、食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣が大きく関係しています。症状が進行すると、血液中のブドウ糖が正常より多くなり、全身の血管や神経が障害され、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、生活習慣の改善や適切な治療によって血糖値をコントロールすることで、病気の進行を防ぎ、合併症を予防することが可能です。遺伝的な要素も影響しますが、肥満や運動不足といった環境要因が病状を悪化させることが知られており、生活習慣の改善が治療の重要な柱となります。

妊娠中の糖尿病

妊娠中の糖尿病「妊娠糖尿病」は、妊娠中に起こる糖代謝異常で、胎盤から分泌されるホルモンがインスリンの作用を阻害し、血糖値のコントロールが困難になることにより発生します。
この状態は、妊婦自身と胎児に多くの健康リスクをもたらす可能性があります。妊娠中は、特に肥満傾向がある女性や糖尿病の家族歴がある場合、インスリン抵抗性が高まりやすく、これが妊娠糖尿病のリスクを高めます。妊娠中に血糖値が上昇しやすくなるのは、胎児へのエネルギー供給を促進するためであり、妊娠後半に特に顕著になります。多くの場合、出産後には血糖値が正常化しますが、未治療の妊娠糖尿病は母子双方に深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。妊娠糖尿病の発生は、妊娠中の明らかな糖尿病や、妊娠前からの糖尿病がある場合とは異なり、特に注意が必要な状態です。

糖尿病の症状

糖尿病に関する自覚症状、合併症による症状、1型と2型糖尿病それぞれに特有の症状には以下のようなものがあります。

自覚症状

  • 常にのどが渇き、水を多く飲むようになる。
  • 尿量が増え、頻繁にトイレに行くようになる。
  • 体重が理由もなく減少する。
  • 常に疲れやすく、だるさを感じる。

糖尿病の合併症による症状

  • 視力の低下や視野の一部が見えにくくなる。
  • 手足のしびれや痛みが現れる。
  • 立ちくらみが起こりやすくなる。
  • 手足や顔がむくみやすくなる。
  • 切り傷が治りにくく、感染症にかかりやすくなる。

1型糖尿病による症状

  • 通常以上にのどが渇く。
  • 多尿になる。
  • 急速な体重減少が見られる。
  • 強い疲労感を感じる。

2型糖尿病による症状

  • 初期段階では症状がほぼなく、進行すると徐々に疲れやすさ、皮膚の乾燥とかゆみ、手足の感覚低下、頻尿、視力の低下、性機能障害、傷の治りの悪さ、空腹感や喉の渇きの増加が見られる。

糖尿病の検査・治療

検査

糖尿病の診断には、血糖値やHbA1cなど、様々な検査が用いられます。

空腹時血糖値

最後の食事から約10時間後に測定され、正常範囲内でも食後に血糖が高くなる可能性があるため重要です。

食後血糖値

食事の後2時間で測定し、インスリンの効果や食事による血糖値の上昇を確認します。

HbA1c

過去1~2ヶ月の血糖値の平均を示し、6.5%以上で糖尿病を示す可能性が高いです。ただし、貧血や腎不全の影響を受けることもあります。

糖負荷試験(75g OGTT)

ブドウ糖を含む飲料を摂取後の血糖値の変動を検査し、耐糖能異常や糖尿病の診断に用いられます。

追加検査

インスリンの分泌状態やインスリン抵抗性を調べる血液検査や、腎機能障害を早期に発見する尿中アルブミン検査が含まれます。

これらの検査は、糖尿病のタイプや治療方針を決定する際に重要であり、糖尿病の早期発見や効果的な管理に役立ちます。特に、糖尿病の予防や早期治療においては、これらの検査結果に基づいた適切な生活習慣の見直しや治療が重要です。

治療

糖尿病の治療は、食事療法や運動療法が基本であり、それだけで血糖コントロールが不十分な場合は薬物療法も併用されます。患者さんご自身が糖尿病の病態を理解し、適切な生活習慣を身につけることが重要です。また、患者さんとその家族が協力し、治療に取り組むことで、重篤な合併症のリスクを抑えることができます。当院では、患者さんが自発的に病気と向き合い、治療へのモチベーションを持ち続けることを大切にしています。これは糖尿病予備軍の方々にも当てはまり、生活習慣の改善が糖尿病の予防にも効果的です。
糖尿病治療の目的は血糖をコントロールして、合併症が起こるのを防ぐことにあります。糖尿病の治療の3本柱は「食事療法」「運動療法」そして「薬物療法」です。中でも食事療法は、治療のかなめとなります。

食事療法

食事療法糖尿病の食事療法は、単なる食品制限や極端なカロリー削減ではなく、バランスのとれた栄養摂取と適正なエネルギー量の維持に重点を置いたものです。個々の身長や活動量に合わせた適切なカロリーの摂取と、炭水化物、たんぱく質、脂質を含む三大栄養素を適切なバランスで摂ることが求められます。また、食べる順番を工夫し、食物繊維を先に摂取して血糖値の急激な上昇を抑える戦略も有効です。外食やアルコール摂取時にも摂取カロリーを意識し、間食や糖分の多い飲み物は控えめにすることが推奨されます。

糖尿病食事療法の基本は、「規則正しくバランスの良い食事を取る」ことであり、これは健康な生活を送る上での普遍的な原則です。重要なのは、食事、運動、薬物療法を含む総合的な治療計画の中での食事療法の役割を理解し、患者自身が積極的に関与することです。日常的な食習慣の見直し、食品交換表を活用した栄養バランスの把握、食物繊維を含む野菜から食べ始めるなどの工夫を取り入れることが、血糖コントロールを改善する上で有効です。さらに、減塩による高血圧予防も同時に行うことで、糖尿病の合併症リスクを軽減することができます。間食については、主治医と相談しながら、個々の状況に合わせて適切に管理することが重要です。

運動療法

運動療法糖尿病治療における運動療法は、食事療法と並んで基本中の基本であり、血糖値の低下やインスリン抵抗性の改善など、多くのメリットをもたらします。ただし、患者の健康状態や既存の合併症、治療内容に応じて、運動の種類や強度には注意が必要です。医師や専門家と相談し、個々に適した運動プランを立てることが肝心です。
主に推奨される運動は、「有酸素運動」と「レジスタンス(筋力)運動」の2種類です。
有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが含まれ、血糖管理のみならず、全体の健康向上にも寄与します。これらは、週に150分以上、週3日以上、各セッション20分以上を目安に行うことが理想とされています。
一方、レジスタンス運動は筋肉量の増加を通じて、糖代謝を向上させ、インスリン感受性を高める効果が期待でき、週に2~3回の実施が推奨されます。
糖尿病の患者にとって、運動は単に身体的な健康を保つためだけではなく、気分の向上や生活の質の向上にもつながります。日常生活の中で自然に取り入れられる運動、例えば買い物時の歩行や家事活動も、有効な運動療法の一環となり得ます。特に、食後の血糖値の上昇を抑えるためには、食後1時間以内の運動が効果的です。
運動療法の成功の鍵は、持続可能性にあります。患者自身が楽しんで続けられる運動を見つけること、そして無理なく生活に取り入れることが重要です。運動前の医師との相談を怠らず、安全に楽しみながら糖尿病と上手に付き合っていくための一歩を踏み出しましょう。

薬物療法

薬物療法は、食事療法と運動療法だけでは血糖管理が不十分な場合に併用されます。薬が処方された後も、基本の食事療法と運動療法は続けることが大事です。続けることで、薬の効果が期待できます。治療薬には、大きく分けて経口血糖降下薬とインスリン注射の2つがあります。糖尿病のタイプや症状、血糖管理の状態などで、どんな薬を使うか判断されます
最近は、薬の種類が増えて、より効果的で、より副作用の少ない治療ができるようになりました。ただし、服用方法や服用量を間違えると低血糖や副作用をおこす危険性があります。自分の薬はどういう働きで、どんな注意が必要か理解し、わからないことがあったら、主治医や薬剤師に相談しましょう。

経口血糖降下薬

多くの種類があり、インスリンの分泌を促進したり、インスリン抵抗性を改善したりするものが選ばれます。患者の状態や合併症の有無に応じて最適な薬が選択されます。

インスリン注射

1型糖尿病患者には不可欠で、2型糖尿病で他の治療でコントロールできない場合に使用されます。注射の種類には速攻型から長時間作用型まであり、患者の生活スタイルや血糖値の状況に合わせて選ばれます。

GLP-1受容体作動薬

体重減少効果もある薬剤です。インスリンの分泌を増やし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。注射薬、経口薬があります。肥満症の治療としては限られた専門病院でのみ実施されています。

まとめ

糖尿病を発症している可能性がある方へのアドバイスです。空腹時血糖値やHbA1cといった血液検査の指標に異常がある場合、糖尿病のリスクが高まっている可能性があります。これらの指標は、体内の糖の利用状態や平均血糖値を示し、糖尿病の診断に不可欠です。糖尿病を放置すると、血糖値の長期的な管理不良から心臓病や腎臓病、失明、下肢の切断などの重篤な合併症を招くリスクが高まります。これらの合併症は、早期発見・早期治療により回避または進行を遅らせることが可能です。もし血糖値の異常にご心配がある方、糖尿病に関連する症状が見られる方は、早めに医療機関での検査・治療を受けることをお勧めします。当院では、適切な診断と治療により、糖尿病の管理を効果的に行い、健康的な生活を維持するためのサポートを提供致します。

著者紹介

荘園内科クリニック 院長  小畑雅寛

資格・所属学会

  • 日本内科学会 認定医
  • 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医・九州支部評議員
  • 日本消化器病学会 専門医
  • 日本肝臓学会 専門医
  • 日本膵臓学会
  • 日本胆道学会

略歴

  • 大分県立中津南高校卒業
  • 熊本大学医学部医学科卒業
  • 熊本地域医療センター 消化器内科
  • 熊本労災病院 消化器内科
  • 愛知県がんセンター中央病院 内視鏡科・消化器内科
  • 熊本大学病院 消化器内科
  • 熊本市民病院 消化器内科
  • 荘園内科クリニック

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